22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2015年08月

雨の中の戦いは、いい時間帯に得点を重ねた広島が名古屋に完勝しました。

序盤はミハエル・ミキッチが右サイドを制圧して、前半6分と9分にゴールを生みだしていきます。まずは本多勇喜のパスがミキッチへのプレゼントパスになり、ショートカウンターを発動。矢田旭をかわして上げたクロスはドウグラスが頭でコースを変えて先制しました。

さらにドウグラスのスルーパスに反応し、小川佳純とのフィジカル勝負に勝ったミキッチがフリーで抜け出し、オフサイドにならないグラウンダーのボールを供給。ボールの転がる先にいた佐藤寿人がプッシュしてあっさりと加点します。佐藤の手前には野津田岳人がいましたが、J1通算得点記録のかかったエースにフィニッシュを譲りました。

その後はゴールこそなかったものの、選手間の距離のバランスがよくない名古屋を相手に、中盤ではほぼフリーの青山敏弘がチームを巧みに操り、前線の選手が果敢にシュートを打っていきました。

名古屋の唯一のチャンスは28分、ミリヴォイェ・ノヴァコヴィッチが中央で広島DFを引き付け、後方から上がってきた小川がシュートを放ったシーンです。しかしシュートは林卓人の正面でした。

後半になると、シャドーを務める永井謙佑と川又堅碁が前掛かりになりすぎないようにポジションを修正するなど、バランスの改善を図り、FKのチャンスも得ましたが、得点を奪ったのはサンフレッチェでした。

7分、狙いが不透明な小川のパスを野津田が奪ってゴール前まで持ち込み、パスを受けた左サイドの柏好文がダイレクトでマイナスのボールを送ります。ボールは青山には合わなかったものの、猛然と走ってきたドウグラスが合わせてリードを3点に広げました。

26分には佐藤に代わって入った浅野拓磨がPKを決めて、4対0とします。この後半の2点が大きくものを言いました。グランパスに2点を奪われてしまったからです。

31分に田中マルクス闘莉王のPKを林が止めるも、直後のCKで牟田雄祐にゴールを許し、一時的に名古屋に躍動感が生まれてパスが回りだします。すると34分、前線にいた闘莉王の浮き球のパスの先にいた永井がヘディングで加点し、点差が2点に縮まりました。

しかし最後にゴールネットを揺らしてとどめを刺したのは広島でした。40分、森崎和幸からのサイドチェンジのボールを受けたミキッチが田中輝希を振り切ってクロスを上げると、ドウグラスは丁寧に頭で合わせ、スコアを5対2としました。

この日、浦和レッズが横浜F・マリノスに敗れたため、相手のミスを逃さずゴールに結び付け、勝ち点3を積み上げた広島は年間順位の首位に立ちました。

第114話から第116話にわたってブラジル対策を入念に行った様子が贅沢に描かれ、最終的に「一対一」で負けない覚悟を植え付けた上で、本物よりはるかにクールなネストール率いるサッカー王国とのアウェーゲームを迎えました。

ブラジル国歌の描写は、先のワールドカップを思い起こさせるようなもので、音を使わずに文字と絵だけの見事な表現であの時のスタジアムの雰囲気をつくりだしていました。

日本は坂本琴音の提案した4-3-3ではなく、本田圭佑を最前線に置いた4-2-3-1でスタート。試合は前半5分、由利速人のすばやいスローインを受けた本田が虚をつくシュートを放って先制します。ペナルティエリアの外からか中かからなのか、どんな弾道でゴールネットを揺さぶったのかはわかりませんが、とにかく「もってる」男のゴールであったことは間違いありません。

その後はブラジルの脅威をじわじわ感じつつも、日本が平常心で真っ向勝負を挑んでいます。負けたら終わりのノックアウトラウンド、しかもホスト国相手だというのに非常に頼もしいイレブンです。

流れが変わったのは、師匠であるカルロ・グロッソ監督が「ブラジルに一番欠かすことができないパーツ」と言わしめるCBのヒクソン・シウバに沖田薫がボールを奪われてからです。そこから前線に持ち込まれ、最後はアンドレアのトゥーキックによるテクニカルなシュートで同点に追い付かれます。

それでも日本はメンタルを保って、再び戦いに身を投じたところでこの巻は終わりました。まだ主人公の坂本轍平が活躍していないので、日本が簡単には引き下がらない展開になっていきそうです。

さて、本田の先制ゴールの詳細が気になった12巻でしたが、もう一つ気になる箇所がありました。それはブラジルのフォーメーション図で最終ラインの並びが逆ではないかという点です。

少なくともSBが逆なのは間違いないようです。マルスのモチーフになったのがマルセロ、ダニエル・アウフのモチーフになったのがダニエウ・アウベスなのは絵柄や劇中の所属クラブからして確実で、そうだとするとマルスが右、アウフが左に配置された図は明らかに違っています。

またマルスとマッチアップしていたのが、右SBの由利である点からもマルスは左SBを任されているはずなのです。単行本化するにあたって、どなたも気付かなかったのか。読者へのクイズではないでしょうし、やや不思議ではあります。

前半30分までにあっさりと2失点を許した鹿島でしたが、最後まで粘り強く攻め続けた結果、逆転で勝ち点3を獲得しました。

最初の失点は3分、大きく蹴り出したい場面で昌子源がミスを犯し、ボールが梁勇基に渡ってしまいます。梁はすぐさま野沢拓也に任せると、野沢は必死で戻ってきた西大伍をかわして左足を振り抜きました。

そして27分、六反勇治のFKを金園英学がファン・ソッコに競り勝って落とすと、そのボールが西の頭上を越えて野沢に渡り、加点しました。

鹿島はなかなか最前線にいい形でボールが繋がらず、六反を脅かすようなシュートも打ち切れませんでした。次第に2トップとサイドハーフがベガルタの最終ラインに並ぶ4トップ気味になってしまい、攻撃時のボランチの負担が大きくなっていました。

すると35分、石井正忠監督は中村充孝に代えてカイオを投入します。その後しばらくは攻めあぐねる状況が続いていましたが、42分に反撃ののろしを上げます。

まず高い位置でカイオがボールを奪うと、赤崎秀平がペナルティエリアを横断してドリブルをして右サイドにパスを出します。これを受けた西がクロスを上げ、西がボールを受ける直前から走ってゴール前に向かった山本脩斗が頭で合わせてゴールを決めました。

ハーフタイム明けにはダヴィを下げて、金崎夢生がピッチに入り、戦い方も少し変えてきました。前がかりだった前線の選手を、仙台のアンカーである富田晋伍のあたりに下げるようにして、ボールが繋がりやすい形をつくりました。

後半5分には遠藤康がカイオとワンツーを決めてクロスを上げ、6分には遠藤がすばやい切り替えでボール奪取に成功すると、これをカイオがキープして反転し、シュートを打ちました。このシュートは六反にセーブされるも、こぼれたボールが金崎の前に転がり絶好機が訪れました。しかし金崎のシュートはバーを大きく越えました。

鹿島の勢いを削ぐため、仙台は野沢を下げてキム・ミンテを入れ、4-1-4-1からボランチを増やした4-4-2にシフトします。これで多少ボランチのエリアに入りにくくはなったものの、アントラーズは意識してボランチと最終ラインの間に選手が入ろうとしていました。

35分、石井監督は最後のカードを切り、赤崎に代えて土居聖真を送り込みます。

2分後、その土居が同点弾を挙げます。山本が中盤でサイドチェンジをすると、フリーの西が頭で折り返します。ゴール前では仙台守備陣が柴崎岳に気を取られ、マークの緩かった土居がヘディングシュートを決めました。そばにいた石川直樹は悔しさを露わにします。

さらに4分後の42分、ベガルタの選手が下がり気味になっていてぽっかり空いた中盤でボールを回し、遠藤のパスを受けた柴崎がワンタッチでスピードを殺した浮き球のラストパスを供給します。それを察知して走った土居が右足でゴールネットを揺らしました。見事な逆転劇でした。

鹿島に終始押し込まれ続けた仙台には同点に追い付くための運動量がなかったようで、終盤は選手の足が止まっていました。したがって3対2のままタイムアップを迎えます。この痛快な逆転劇によって、鹿島は2ndステージ首位に躍り出ました。

試合が動いたのは前半11分でした。工藤壮人が神戸DFを引き付け、フリーのエデルソンにやさしいパスを送り、新加入のブラジル人ストライカーがシュートを決めました。

その後は柏のパスワークが冴え、試合の主導権を握ります。23分には一旦、岩波拓也にボールを奪われますが、すぐさま秋野央樹が奪い返して、大谷秀和、工藤、エデルソンと繋いで、最後はクリスティアーノが力強いシュートを放ちました。ここは山本海人の好セーブにあって、2点目とはなりませんでしたが、神戸を自陣に釘付けにするには効果的な攻撃でした。

しかし時間の経過とともに、レイソルのリズムが悪くなり、バイタルエリアでパスが繋がらなくなると、神戸が盛り返してきます。40分には森岡亮太が巧みなボールコントロールから高橋峻希に渡すと、そのままハーフウェイラインからドリブルで持ち込んで、ペナルティアークの手前で鋭いシュートを打ちます。ここは菅野孝憲がセーブして逃れました。

ハーフタイムを挟んでも神戸の優勢は続き、後半2分に渡邉千真がターンして秋野をはがしてシュート、4分には高橋峻希のリターンパスを受けた森岡のシュートがサイドネットの外側を揺らしました。

さらに13分には、レアンドロとの1対1こそ鈴木大輔が阻止しましたが、クリアボールを拾われて、三原雅俊、森岡と渡り、最後は石津のシュートがポストを叩くという危ないシーンも見られました。

柏は中央を固め、最後のところは神戸に自由にやらせないディフェンスを続けるも、攻撃への切り替えがうまくいかず、シュートまで持っていけなかったため苦しい時間が続きました。吉田達磨監督がエデルソンに代えて武富孝介を、小林祐介に代えて茨田陽生を入れてテコ入れするも、状況はなかなか好転しませんでした。

そこで最後のカードとして山中亮輔を投入しようと準備していた27分、クリスティアーノのクロスをチョン・ウヨンが跳ね返したボールを輪湖直樹が収め、左足を振り抜くとボールはクロスバーをヒットしてゴールラインを割りました。押し込まれて苦しかったチームを救う値千金の追加点でした。

リードを広げたことでレイソルは息を吹き返し、プレスもかけられるようになりました。前線ではクリスティアーノが躍動し、30分、36分とゴールを狙っていきました。

アディショナルタイムには一転してヴィッセルの波状攻撃にさらされるも、体を張って防ぎます。レアンドロのシュートには3人が身を投げ出し、鈴木がブロックに成功。さらにレアンドロのヒールパスを受けた三原がゴールを狙いますが、コースを切りに行った柏の選手が気になったか、クロスバーの上を越えていきました。

また、48分のレアンドロのミドルシュートも菅野がキャッチします。その後は中盤と最終ラインでボールキープをして逃げ切りに成功しました。全体的には耐える時間帯が多かったゲームながら、集中したディフェンスが光り、完封勝ちを収めました。

ホームの万博で南米王者リーベルを迎えたガンバは、チャンスこそ数々つくりましたが、それらを生かしきれずに完封負けを喫しました。

とりわけ序盤はリーベルの容赦なく激しいプレッシャーと、相手DFが目の前にいようがかまわずゴールを狙う姿勢に圧倒され、主導権を握られていました。

この展開を凌ぎたいところでしたが、前半7分、シュートを浴び続けた中で井手口陽介がエリア内でファウルを犯し、PKを与えてしまいます。それをカルロス・サンチェスが豪快に決めてリーベルが先制しました。

その後もガンバは思うようにボールを動かせずにいましたが、21分に絶好機が訪れました。今野泰幸が自陣から相手最終ラインの背後を狙ったパスを出すと、パトリックがそれに反応して走ります。これに対応すべく、マルセロ・バロベロが走るも、判断ミスでボールが頭上を越えていきました。パトリックの目の前には無人のゴールが広がっていましたが、トラップをしているうちにバロベロに追い付かれてフィニッシュには至りません。ここで追い付いていれば、というシーンでした。

前半の中盤が過ぎると、リーベルの開始当初の勢いは落ちてきました。それでもガンバは体を寄せられて意図のないボールを蹴らされるばかりになり、最前線のパトリックに収まらないまま時間が流れていきました。

すると31分、セバスティアン・ドリウッシのクロスをハビエル・サビオラがボレーで狙います。ボールは井手口に当たってCKになりました。サンチェスのプレースキックはファーサイドにいたガブリエル・メルカドに届き、ヘディングで加点します。ほんのわずかなマークのずれがガンバの失点につながりました。

ややトーンダウンしたとはいえリーベルは攻めの姿勢を貫きます。ペナルティエリアに入れば一瞬の隙を突き、迷わずシュートを打つ意識でプレーしていました。

そんな状況の中、長谷川健太監督は金正也に代えて、東アジアカップから戻ってきたばかりの倉田秋を投入し、システムを4-2-3-1から4-4-2へと変更。遠藤保仁と今野をそれぞれ一列下げました。

前半終了間際、クロスバーをヒットしたサンチェスのシュートの流れで得たCKのこぼれを遠藤が拾い、スルーパスを出してリンスに繋ぐと、リンスはキープして倒れながら倉田にボールを預けます。倉田は追いかけてくるリーベルの選手をドリブルで振り切り、相手ペナルティエリア付近でクロスを上げました。しかし中央にいたパトリックには届きませんでした。

後半16分、今度はリーベルがガンバのCKからカウンターを仕掛けます。最後は藤春廣輝の前に体を入れたゴンサロ・マルティネスが鮮やかに弧を描くシュートを決めました。リードを3点に広げる大きな一撃でした。

それでもリーベルのプレスが弱まり、後方ではボールを回せるようになったガンバはあきらめずに攻めていきます。24分、阿部浩之が逆サイドでフリーの二川孝広に渡すと、二川がDFとGKの間を狙った絶妙なパスをゴール前に供給しました。そこには遠藤とパトリックが走り込んでいましたが、ボールは体を投げ出した二人の前を抜けていきました。

32分には二川が左サイドの阿部に送ると、阿部はダイレクトで折り返します。それを倉田が合わせましたが、バロベロに阻まれてしまいました。

以後もさかんにシュートを放ち、ゴールを奪いに行くもののスコアは動きませんでした。ガンバはフルメンバーではなかったのは事実ですが、90分を通じて決定機は少なくなかっただけに残念な結果となりました。

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