22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2015年07月

いい時間帯に順調に得点を重ね、安定した試合運びをした東京の完封勝ちで終わりそうだった試合は、終盤に一転。歯がゆさが残る結末となりました。

前半は東京が左サイドを制圧し、実質的な主導権を握っていました。先制点もそのサイドから生まれました。

9分、中盤の競り合いでこぼれたボールを高橋秀人が拾って、そのまま太田宏介に預けると、太田は左サイドを独走。チェックに来たレオ・シルバが接近する前に、グラウンダーのクロスを上げます。そこへ絶妙な動きでフリーになった東慶悟が冷静に押し込みました。

太田はサイドの攻防のみならず、セットプレーでも精度の高さを見せつけていました。41分には太田のFKを森重真人がダイレクトで合わせ、背中を向けた舞行龍ジェームズの手に当たるシーンがありました。ここではPKの判定にはなりません。

最初の45分でホームチームが危なかったのは、26分の場面くらいでした。左サイドのコルテースからボールを受けたレオ・シルバがトラップで梶山陽平をかわし、苦しい体勢から前方にパス。山崎亮平は切り返しで吉本一謙を振り切り、シュートを放ちました。シュートブロックに飛び込んだ権田修一、森重、そして吉本の姿が視界に入ったか、ボールはゴールの枠を外れました。

後半序盤、東京がさらにリードを広げます。4分、ハーフウェイライン付近からの森重のFKを前田遼一が受け、レオ・シルバと大井健太郎をエリア内で外すと、後方へやさしいパス。そこへ高橋秀人が走り込んでフィニッシュを決めました。この時の対応が大きな問題だったのか、大井は5分後に大野和成と交代させられました。

2点ビハインドを背負った新潟は、ゴールを狙いに行きますが、クロスは中央にうまく到達せず、中央の崩しもバイタルエリアの一、二歩手前までしか進めないなど、ゴールのにおいを感じさせない攻撃に終始しました。

そうこうしているうちに33分、再び新潟ゴールのネットが揺れます。太田のFKにファーサイドから回り込み、フリーの状態になった森重が頭で合わせて、とどめを刺しました。森重についていた大野は、高橋にブロックされてマークを外されてしまいました。

その後は途中投入された新加入のフランシスコ・サンダサのJリーグデビューを温かく見守る空気に包まれていました。38分にはコースを狙ったシュートを、44分にはカウンターでドリブル突破を見せるなど、可能性を感じるプレーを披露しました。

このまま3対0でタイムアップするかに思われた49分、三上正一郎主審はペナルティスポットを指さしました。これは新潟のCKの際、森重が大野を倒したというジャッジでした。スローVTRでは二人が互いに相手を押さえてもつれて倒れたかに見えましたが、判定は変わりません。

森重は主審に言い寄りながら、手にしていたボトルをピッチに叩きつけたい衝動を必死に抑えていました。

このPKをレオ・シルバが逃さず、スコアは3対1に変わります。そして試合が終わりました。当然のごとく、東京サポーターからは大きなブーイングが起きました。森重はまだ納得いかない様子で、再び審判団に詰め寄り、何度も首をかしげていました。

試合の大勢に影響はなかったものの、完勝しながらすっきりしない終幕となりました。

土曜日に公式戦が控える中、現時点でのほぼベストのメンバーで臨んだ川崎と、トーマス・トゥヘル新監督の下、試運転を始めたばかりのドルトムント。温度差の違う両者のフレンドリーマッチは、ドルトムントの圧勝に終わりました。

ドルトムントは最初のチャンスをゴールに結び付けます。前半5分、ヨナス・ホフマンのクロスはブロックされますが、続けてウカシュ・ピスチェクが上げたボールは、ゴール前中央で待っていた香川真司にピタリ。香川は難なく頭を合わせ、先制点を奪いました。

さらに36分、大島僚太と新井章太の連係ミスから生まれたCKの流れで、ドルトムントが追加点を挙げます。セカンドボールを奪って、左サイドにいたマルコ・ロイスまでボールが渡ると、そのままエリア内に入ってマイナスのクロスを送ります。再びゴール前でフリーの状態にいた香川が右足を当てて決めました。

川崎は前半途中から4-3-3から4-4-2にシステム変更しましたが、配置を変えても思ったようにボールは回らず、ドルトムントをほとんど攻略できずにいました。ただ一人、レナトだけが孤軍奮闘してシュートを打っていた印象です。

後半、ドルトムントは序盤から果敢に攻めに関わっていた丸岡満を除いて、メンバーを10人交代しました。それでも主力組とそれ以外の選手達がうまくミックスされたイレブンは、チームの勢いを落とすどころか、ゴールラッシュを見せてくれました。

8分から14分にかけては一気に3点を奪ってしまいました。そのうち二度はピエール・エメリク・オーバメヤンによるものでした。最初は谷口彰悟のクリアが不完全になったところを逃さず、飛び出した新井の頭上を越えるシュートで決め、4分後にはドルトムントが川崎のお株を奪うように12本のパスを繋ぎ、マルセル・シュメルツァーが左サイドから鋭いクロスを上げると、それに飛び込んで合わせました。

そして14分には丸岡がヘンリク・ムヒタリアンの浮き球のスルーパスに反応。新井との1対1になりましたが、冷静に流し込んで5対0とします。

とどめは35分。中村憲剛のやや苦しい体勢からのパスをジョン・スタンコビッチが奪うと、ボールを預けてゴール前まで走っていき、最後はオーバメヤンのやさしいパスに合わせてゴールを決めました。

川崎は44分、橋本晃司が粘り強いドリブルからクロスを供給して、ファーサイドにいた小林悠がトラップしてシュートを放ちましたが、ロマン・ヴァイデンフェラーの体を張ったブロックに阻まれました。この試合最大のチャンスすらゴールには結び付けられませんでした。

結局、J1屈指の攻撃力を誇る川崎は1点も挙げられず、6対0でドルトムントが難なく勝利を収めました。

歴戦の勇士達がわずか5分でパニックに陥りました。

前半3分、ミーガン・ラピノのCKは低い弾道でした。大野忍が触れなかったそのボールに、ペナルティエリアの外からまっしぐらに突進してきたカーリ・ロイドが合わせてアメリカが先制します。ロイドを警戒していた岩清水梓のタックルもおよびませんでした。

4分、左サイドの深い位置で鮫島彩がトビン・ヒースを倒して、アメリカにFKのチャンスが訪れます。1分後、ローレン・ホリデーが密集地帯に低いボールを入れます。ジュリー・ジョンストンがフリックしたボールが、阪口夢穂らに当たってこぼれたボールに対して、再びペナルティエリアのすぐ外からロイドが走ってきて押し込み、早くも追加点を挙げました。

日本対策と思われる変化を加えたリスタートで失点を重ね、観客のボルテージもヒートアップする中、なでしこジャパンは持ち味を発揮する前に劣勢に立たされてしまいました。一気に追い込まれたムードとなり、なかなかすぐには立て直すことができません。アメリカの高い位置をキープしたブロックを崩せないまま時間が流れました。

14分、中盤でボールを奪われると、右サイドのヒースが早目にクロスを上げます。熊谷紗希が対応しましたが、間に合いません。バウンドしたボールの処理を岩清水が誤り、浮いた球をホリデーに決められてしまいました。

さらに16分、宮間あやから大野へのパスがミスになり、ロイドに拾われます。ロイドは宇津木をかわすと、ハーフウェイライン中央からゴールを狙いました。海堀あゆみが前に出ていたところを突かれた格好で、ボールはネットに吸い込まれます。まだ75分近くあるとはいえ、サッカーにおいてはほぼ絶望的なスコア、0対4になりました。

18分にもメガン・クリンゲンバーグのクロスにロイドが頭で合わせ、あわやという場面をつくられました。

日本はここで選手の配置を変えます。宮間をボランチに、宇津木瑠美を左SBに、鮫島を左サイドハーフに移しました。より攻撃的に行くためのシフトでした。

すると27分、大儀見優季が反撃ののろしを上げます。センターサークル内にいた宮間が右サイドの川澄奈穂美に展開。川澄はカットインして大儀見に任せます。なでしこのエースは、ジョンストンをつぶし、左足を振り抜きました。ホープ・ソロが手を伸ばしましたが、止めきれませんでした。

30分には岩清水が相手陣内でボールを奪い、宮間、大野、大儀見のパスワークで中央を突破します。そして一旦、鮫島に預けて送られてきたクロスからチャンスをつくります。最後の宮間のシュートはソロがキャッチしました。

なでしこジャパンらしいリズムが出てくると、佐々木則夫監督が大胆に動きます。33分に澤穂希、39分に菅澤優衣香を投入しました。これで阪口をCB、大野を右サイドに置く形に変えました。澤に代わって退くことになった岩清水はベンチに座り、涙が止まりません。

1対4で折り返した後半、アメリカが再び牙をむきます。5分、右サイドでボールを回し、最後はモーガン・ブライアンがミドルを放ちました。ここは海堀がセーブして逃れます。

しかし1分後、大儀見がファウルを受けてFKのチャンスを得ます。宮間の蹴ったボールは、澤と競ったジョンストンの頭に当たってゴールの中に入りました。後半の早い時間帯に2点差に詰め寄る貴重な1点でした。

希望が見えてきた最中、日本はそれを打ち砕く1点を奪われてしまいました。9分、ホリデーのCKが流れたところをブライアンが折り返し、フリーのヒースが押し込んだのです。これで再び3点差となりました。

佐々木監督は、15分に最後のカードを切ります。大野に代えて岩渕真奈を投入しました。さらに25分過ぎには有吉佐織を高い位置に配した3バックに変更。なりふりかまわず攻めの姿勢を前面に出します。

31分、自陣からボールを動かし、熊谷が縦に長いボールを入れると、大儀見がキープして、鮫島に預けます。鮫島から宮間に繋がると、キャプテンはダイレクトでクロスを入れました。そこへベッキー・サウアブルンを振り切った菅澤が走り込んでヘディングシュートを放ちます。しかしボールはソロの正面でした。

その後も攻め続けましたが、出足が早く、自由を与えさせないアメリカの守備を攻略しきれず、なでしこに次のゴールは生まれぬままタイムアップを迎えました。

選手もベンチも最善を尽くしましたが、ワールドチャンピオンのバッジを奪いに、リベンジに燃えていたアメリカは強かった。そう言わざるを得ません。ただ、準優勝という結果はすばらしいものです。それにこれから続くなでしこリーグ、東アジアカップ、各国リーグ、リオ五輪予選、そして本大会――と彼女達の戦いはまだまだ終わりません。再び頂点に立つその日を信じて、見守っていきたいと思います。

3位の座を賭けた一戦は、イングランドが延長後半にPKを決めて勝利を収めました。

この試合、イングランドは3バックを採用し、高い位置からプレスをかけるのではなく、ドイツの攻撃を凌ぐことを優先したスタイルをとりました。

それでも序盤はドイツがチャンスをつくります。前半1分、自陣からボールを繋ぎ、左サイドのサラ・デブリッツがクロスを上げると、レナ・ペーターマンがフリーの状態で頭を合わせました。これはカレン・バーズリーがセーブして事なきを得ます。

8分にはビアンカ・シュミットのヘッドでの折り返しに対し、ジョー・ポッターとバーズリーの連係ミスが起こるも、キャプテンのステフ・ホートンがゴールライン手前で懸命のクリアをして逃げ切りました。

以降もセリア・シャシッチやデブリッツがシュートを放つも、ディフェンスに人数をかけたイングランドはゴールを許しませんでした。

後半に入ってからしばらくもドイツの攻勢が続きました。8分、ポッターのクロスが不完全になったところをシャシッチが拾い、体勢を整えてからクロスを上げました。ゴール前にうまく入り込んだデブリッツがダイレクトで合わせましたが、バーズリーがセーブしました。

ドイツの集中砲火を浴びていたイングランドが盛り返したのは、後半30分を過ぎてからでした。31分、最終ラインからのロングボールに抜け出したルーシー・ブロンズが受け、途中出場のエニオラ・アルコ、ジル・スコットと繋いでチャンスが生まれました。ジル・スコットはシュートを打ちきれず、再びアルコ、カーニーへと渡り、カーニーのクロスにジル・スコットが飛び込むも枠をとらえられません。

イングランドを率いるマーク・サンプソン監督は流れが来たと感じたのか、35分にケイティ・チャップマンに代えてFWのリアン・サンダーソンを送り込み、システムを4-4-2に変えました。

それでもゴールは生まれず、延長戦へと突入します。

延長前半はともにCKからのシュートチャンスがあったくらいで、決定機と呼べるビッグチャンスは生まれませんでした。

ゲームが動いたのは延長後半1分。ルーシー・ブロンズのスローインを受けにターンして走ったサンダーソンを、タベア・ケメが倒したとしてPKの判定が下りました。キャプテンを務めるナディネ・アンゲラーら、ドイツの選手は執拗に抗議しますが認められません。

キッカーを任されたファラ・ウィリアムズは、アンゲラーの逆を突いた強烈なシュートを決め、イングランドが待望の1点を奪います。

すると7分、ウィリアムズを下げてケーシー・ストーニーを送り込み、イングランドは再び3バックに戻します。ここからはアルコも守備に奔走し、ホートンを中心とした堅い守備で逃げ切りを図ります。

1点が欲しいドイツは相手ゴール前での10分のアーニャ・ミッタークのFK、そして11分にはアレクサンドラ・ポップのクロスをシュミットがフリーで合わせる場面がありましたが、どちらも生かしきれません。

結局、イングランドの守備がドイツを勝り、3位という好成績で終えることとなりました。

AFC U-23選手権に向けて仙台で行われた強化試合は、日本が危なげなくコスタリカを下して終わりました。

日本は前半から積極的にシュートを打って、主導権を握ります。前半6分、遠藤航が反転してガブリエル・レイバをかわしてスルーパスを出し、最終ラインの背後を突いた浅野拓磨が迷わずシュートを放ちました。ここはファーサイドのポストに阻まれ、先制点とはなりませんでした。

21分には、野津田岳人のCKをウィリアム・ヘルナンデス・ゴンサレスとスティーブ・ガリタ・ヒメネスに競り勝った遠藤が頭で合わせるも、GKダリル・パーカー・コルテスにセーブされます。

初めて相手のゴールネットを揺らしたのは、36分でした。CBの間にポジションをとった遠藤が、左サイドに正確なロングパスを供給。亀川諒史が縦への突破でヒメネスを振り切ると、中央にクロスを上げます。それを野津田が飛びながら右足に当てて決めました。この時、浅野がダイアゴナルな動きで、フリオ・カスカンテ・ソロルサノを引き付け、浅野をフリーにした動きも見逃せません。

結局、45分間で危なかったシーンというと、10分のミスパスをルイス・セケイラ・ゲレロにかっさらわれ、カウンターを食らったところぐらいでした。マイロン・ジョルジのシュートはコースを狭めて体を張った櫛引政敏が防ぎました。

8人交代可能というレギュレーションで、目まぐるしく選手が入れ替わった後半も、日本のペースは落ちません。

後半6分、交代出場の喜田拓也が高い位置でボールを奪ってペナルティエリアに入り、マイナスのクロスを送ります。野津田が走り込んでいましたが、ヒメネスのスライディングしてのディフェンスに阻止されました。

その後、亀川や中島翔哉がクロスを上げますが、なかなか決定機には結びつきませんでした。

こうした中で結果を出したのが、25分に野津田に代わって入った金森健志です。32分、中盤でウィリアム・キロスのミスパスを奪った金森は、ペナルティアークまで持ち込んで豪快に右足を振り抜きました。アウトにかかったボールはゴールネットを激しく揺さぶりました。

37分には波状攻撃から再び金森が相手DFのわずかな隙間を縫ってシュートを放ちますが、今回はコルテスに止められてしまいます。

そして43分、手倉森誠監督は遠藤に代えて奈良竜樹を入れて、5バックに変更。終盤の逃げ切り策を試して安全に試合を締めます。結果、リオ五輪の最終予選まで限られた貴重な機会を生かせた快勝となりました。

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