22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2015年06月

一気呵成の3分間と惜しまぬプレス ――女子ワールドカップ準々決勝 イングランド女子代表対カナダ女子代表

準々決勝最後の試合は、激しいプレスと固い守りでホスト国カナダを破ったイングランドが2対1で勝利しました。

最初にチャンスをつくったのはカナダでした。前半8分、自陣ペナルティエリア内でソフィー・シュミットが、カレン・カーニーからボールを奪うとドリブルを開始。右サイドの前方にいたクリスティーヌ・シンクレアに預けます。カナダのキャプテンは相手2人を股抜きで突破すると、逆サイドでフリーだったメリッサ・タンクレディにラストパスを送ります。大胆なサイドチェンジを受けたタンクレディは、迷わず右足を振り抜きました。

しかし11分、イングランドが早くも均衡を破ります。カナダのCBローレン・セッセルマンが、デシレ・スコットのバックパスをコントロールしきれず、プレッシャーをかけてきたジョディー・テイラーにボールを奪われてしまいます。テイラーはカバーに回った左SBのアリサ・チャップマンをかわしてシュートを決めました。体を投げ出したカデイシャ・ブキャナンもおよびません。国際映像は喜ぶテイラーと膝に手をついて落ち込むセッセルマンを交互に映し出しました。

これで手を緩めることなく、イングランドは直後の14分に加点します。ファラ・ウィリアムズが遠い位置からのFKをゴールに向かって蹴り、ルーシー・ブロンズがファーサイドでアリサ・チャップマンをものともせず頭を合わせます。ボールはクロスバーを直撃して、ゴールラインの内側に落ちました。前日のアメリカの得点と同様に、ゴールから離れたところでのセットプレーでも油断できないパワーを見せつけました。

28分にも、追加点の時よりは近い位置からのウィリアムズのFKをケイティ・チャップマンが頭で合わせ、バーを直撃するシーンがありました。セットプレーの制空権は完全にイングランドが制圧していました。

2点のビハインドを背負ったカナダは、シュミットとシンクレア中心に攻撃を仕掛けていきます。その攻撃が実ったのが42分でした。クリアボールを拾ったカナダが、相手陣内でパス回しをして、最後にシンクレアのパスを受け取ったアシュリー・ローレンスがターンしてジェイド・ムーアをかわし、シュートを放ちます。これをカレン・バーズリーが捕球しきれず、シンクレアが押し込んで1点差に詰め寄りました。

後半も両者が攻め合う展開が続きました。まずイングランドは10分、シュミットからボール奪取したカーニーが持ち込んでラストパスを送ると、テイラーがシュートを打ちました。しかしエリン・マクラウドがセーブして3点目を阻止します。

対するカナダは17分にペナルティエリア手前でステフ・ホートンからシンクレアがボールを取ると、そのボールがタンクレディに渡ります。ここではシュートを打つタイミングが遅れ、クリアされます。

主導権を握りきれない中でなんとか同点に追い付こうとジョン・ハードマン監督は手を打ち、ダイアナ・マセソン、アドリアーナ・レオン、ケイリン・カイルを送り込みました。

そして38分、相手エリア内でローレンスがボールを拾うと、一旦、外のレオンに預けます。するとレオンは左足でストレート系のクロスを上げ、シュミットがダイレクトで合わせました。ところがボールはゴールを大きく外れてしまいました。絶好のチャンスを逃した格好です。

その後も互いにシュートを打ち合うも、スコアは動かず、2対1で終わりました。イングランドは後半の早い時間帯にGKのバーズリーがアクシデントで交代するシーンがありましたが、それでもゴールを許しませんでした。わずか3分間に得点を重ねた一気呵成の攻撃と、簡単にパスを通さず、ミスを見逃さず、そして何より労を惜しまないプレスでカナダを退けました。

両者を分けた経験の差 ――女子ワールドカップ準々決勝 オーストラリア女子代表対日本女子代表

昨年の女子アジアカップ決勝以来の対戦となったオーストラリア戦は、終了間際の岩渕真奈のゴールでなでしこジャパンが勝利を収めました。

暑さの中始まった試合の序盤は、実直なサッカーをするオーストラリアが思ったほど激しいプレスを仕掛けてきませんでした。日本はロングボールを蹴って様子を見ていましたが、次第に普段のパスサッカーにシフトしました。

肝だったサイドの攻防では、左SBの鮫島彩、右サイドハーフの川澄奈穂美が制圧し、特に注意すべきだったサイドアタッカーでキャプテンのリサ・デ・バナを守備で走らせることに成功します。

前半のチャンスは、川澄が多く演出しました。8分、背番号9のハーフウェーラインからのスルーパスに大野忍が反応してループシュートを、22分にも大儀見優季のリターンパスを受けた川澄のクロスに大野がダイレクトで合わせました。

ただ全体的に最後のところの精度が低く、なかなか際どい枠内シュートも生まれません。33分にようやく宮間あやのペナルティアーク付近で放ったミドルシュートが、リディア・ウィリアムズを襲いました。

一方、オーストラリアの攻めは、岩清水梓、有吉佐織ら守備陣が集中したプレーで抜け出しを防ぎます。44分のカウンターからのキア・サイモンのミドルは、海堀あゆみが正面でキャッチしました。

後半は若干寄せが速くなったオーストラリアに対し、臆することなく主導権を握り続けます。

14分には鮮やかな崩しからフィニッシュまで持っていきました。宇津木瑠美が高い位置でボールを奪うと、大儀見、大野、川澄と繋ぎ、川澄はヒールで有吉に渡し、深い場所からラストパスを送ります。そこへ猛然と走り込んできた宮間がヒールで合わせました。枠こそとらえられなかったものの、高度な連携を披露しました。

オーストラリアはテクニカルなデ・バナ、カトリーナ・ゴリーに代えて、ラリッサ・クラマー、ミッシェル・ヘイマンといった身長の高い、パワープレーで機能する選手を送り込みました。それでも日本は慌てることなく、失点のにおいを感じさせないプレーで乗り切ります。

そして再三攻めながらゴールが奪えずに時間が経過していた42分、たくさんの選手が絡んで先制点が生まれます。宮間のCKを跳ね返されたこぼれを宇津木が生かしてシュート。ミートしなかったボールが前方にいた岩清水に繋がると、今度は岩清水がシュートを打ちます。そこはウィリアムズのブロックにあいますが、倒れ込みながらボールを蹴りだすと、その先には岩渕が待っており、岩渕は右足を合わせてゴールへと蹴り込みました。

終盤、予想通りパワープレーでオーストラリアが攻めてきましたが、最後は49分にエミリー・バン・エグモンドのシュートを海堀がキャッチして打ち止めとなりました。

振り返れば、危なかったのは後半9分、阪口夢穂がボールを失い、バン・エグモンドとサマンサ・カーにシュートまで持っていかれた場面くらいでした。これまでの試合のようにディフェンスがバタつく状況をほとんどつくらせませんでした。

落ち着いた盤石の試合運びができたのは、ブラジル戦でワールドカップのノックアウトラウンド初勝利を挙げた相手に対し、近年、オリンピックを含む世界大会で上位に入っている日本とでは、選手達の経験値に大きな差があったからでしょう。経験豊富で場慣れしたなでしこジャパンは、準々決勝の舞台でも普段通りのサッカーをして勝ち切りました。

残る相手はパワフルなサッカーをするチームばかり。尻上がりに調子を上げる熟成したなでしこジャパンが、果たしてどこまで行けるのか。まだまだ楽しみは尽きません。

圧倒しての1対0 ――女子ワールドカップ準々決勝 中国女子代表対アメリカ女子代表

ベスト4の椅子をかけた一戦は、アメリカが中国を1対0で下しました。

アメリカは前半2分、カーリ・ロイドのスルーパスに反応したエイミー・ロドリゲスのシュートを皮切りに中国相手に攻め立てます。特に前半半ば以降は中国が完全に守勢に回り、アメリカが時にはスピーディーなパスを回すなどして押し込む展開が続きました。

26分にはアメリカに絶好のチャンスがやってきました。中国陣内でクイックリスタートをしたロドリゲスからのボールをアリ・クリーガーがダイレクトで中央に折り返し、GK王飛が触れず流れたところ、ジュリー・ジョンストンがシュートを打ちます。しかしカバーに入っていた李冬娜がかろうじてクリアしました。

また37分にはロイドが強烈なFKを見舞うも、今度は王飛が弾きました。アメリカは結局、前半で11本のシュートを浴びせました。

そして後半6分、ついにアメリカが均衡を破ります。メガン・クリンゲンバーグのハーフウェーライン付近からのFKを受けたジョンストンが前方に大きく蹴ると、ロイドが趙容に競り勝ってヘディングシュートを決めたのです。実にアメリカらしいパワフルな攻撃でした。待望のゴールにテンションが高くなったロイドは、コーナーフラッグを蹴って喜びを爆発させます。

中国はなかなか押し上げられず、思うようにフィニッシュに繋げられません。19分には王珊珊のヘッドが流れたところを拾った王麗思がシュートを打ちきれず、アメリカDFに阻止される場面がありました。また35分の王麗思のFKはホープ・ソロの正面で、難なくキャッチされます。

最後は運動量の落ちないアメリカが危なげない守備で逃げ切りました。中国のエース王珊珊はポストプレー以外ではほとんど機能することができずに終わってしまい、大会を去ることになりました。

元世界女王の意地 ――女子ワールドカップ準々決勝 ドイツ女子代表対フランス女子代表

準々決勝屈指の好カードは、ドイツがPK戦を制して準決勝に駒を進めました。

前半はフランスが優勢でした。1分、ジェシカ・ウアラのスローインをユジェニ・ル・ソメが頭で繋ぎ、ボールを受けたエロディ・トミが右サイドを突破します。そしてドイツDF陣を引き付けてからフリーのルイーザ・ネシブに預けると、ネシブがシュートをダイレクトで打ちました。シュートは惜しくも枠をとらえられませんでした。

以降もフランスが高い位置でボールを収める展開が続き、特にトミが果敢に右サイドを攻めてゴール前にクロスを供給しました。41分から43分にかけては3本続けてのクロスもありました。

対するドイツは、セットプレーのチャンスをつかみ、前半で6本のシュートを放つものの、決定機と呼べるものはほとんどありませんでした。スコアは動かず、0対0で折り返します。

後半開始とともに、ドイツはアーニャ・ミッタークに代えてジェニファー・マロジャンを投入。先に動いて、悪い流れを変えにきました。

すると後半5分、アレクサンドラ・ポップがタッチライン際でボールを拾うと、セリア・シャシッチがマロジャンとの距離の長いワンツーを決め、ペナルティアーク付近からシュートを打ちます。ここはサラ・ブアディがセーブしました。

13分にはマロジャンが自ら得たFKで、直接ゴールを狙います。今度もブアディに止められましたが、ドイツの交代策は功を奏していました。

しかし、先制したのはフランスでした。19分、ウアラのロングボールをバベット・ペーターがクリアするも、こぼれ球に対してネシブが反応し、シュートを放ちます。ボールはアニケ・クラーンに当たってコースが変わり、ゴールネットに吸い込まれていきました。

あとがなくなったドイツは25分にサラ・デブリッツ、34分にメラニー・ベーリンガーを送り込みます。

これですべてのカードを切り終えた38分、ペナルティエリア内でレオニー・マイアーのクロスがアメル・マジュリの左手に当たり、PKを獲得。1分後、シャシッチがブアディの逆をついて同点に追い付きます。

勢いの出てきたドイツは、ディフェンスの体を張ったプレーもあり、さらなる失点を許しません。試合はそのまま延長に突入しました。

延長前半はドイツがやや優勢でした。後半24分に退いていたトミのサイドを使って攻撃を仕掛けます。またセットプレーのチャンスもいくつかありましたが、ゴールには至りません。

延長後半になると、さすがに両者ともに疲れの色が濃くなったか、決定機がないまましばらく時間が流れました。

唯一の決定機は、フランスがつくりだしました。11分、ルーズボールを拾ったウアラがアマディーヌ・アンリとのワンツーを決め、DFとGKの間にクロスを入れます。そこに延長前半に投入されたフレッシュなガエタヌ・ティネが走り込みましたが、すねに当たって枠をそれていきました。ティネは思わず看板に蹴りを入れました。

結局、120分間の戦いでは決着がつかず、試合はPK戦にもつれこみました。ドイツが5人成功したのに対し、フランスは5番目のクレール・ラボジェのキックが、ナディネ・アンゲラーの左膝に当たり失敗。辛くもドイツが生き残りました。優勢ではない厳しい試合でも勝ち抜けたのは、連覇を経験したことのある元女王の意地が最後はものをいったからだと言えそうです。

安堵の一勝 ――女子ワールドカップラウンド16 日本女子代表対オランダ女子代表

これまで突破力のある選手に苦しめられてきた日本でしたが、マノン・メリス、リーケ・マルテンスにいい仕事をさせずに抑え、2対1で準々決勝進出を決めました。

序盤は負けられない、負けたくないノックアウトラウンドということで、両チームとも慎重な立ち上がりでした。そんな中でなでしこジャパンが最初のビッグチャンスを生かします。

前半10分、鮫島彩のスローインを起点に、熊谷紗希、鮫島、宮間あや、大野忍と繋ぎ、宮間がリターンパスを受けると、スピードに乗った状態でクロスを上げます。中央で相手DFを振り切った大儀見優季が頭をひねってシュートを放つもクロスバーを直撃しました。こぼれたボールに対し、メレル・ファン・ドンゲンが不完全なクリアをすると、そこに待ち構えていたのは有吉佐織でした。有吉は右足を振り抜き、鋭いシュートがサイドネットを揺らしました。この有吉の攻め上がりは3分と同じような形でした。

その後も日本はボールが転がりにくく止まりやすい人工芝の上で躍動。しきりにシュートを狙っていきます。

21分、宇津木瑠美から、阪口夢穂、川澄奈穂美と展開し、大儀見がDFを引き連れたおかげでできたスペースにポジションをとった宮間に川澄がラストパスを供給。宮間はそれをダイレクトで打ちました。

続く22分には、宮間がオーバーラップしてきた鮫島に預けると、鮫島は大野とのワンツーに成功。鮫島は浮き球に対して左足を合わせました。

24分にも阪口の縦パスを大野が落とし、川澄がペナルティアークからシュートを放ちました。

いずれも枠をとらえられはしませんでしたが、なでしこらしさ全開のサッカーを披露します。

対するオランダはレンジの長いパスを出していくものの、世界トップクラスのドイツに比べれば精度は低く、なかなか決定機には結びつきません。このまま前半を1対0で折り返します。

後半、あとがなくなったオランダがやや攻勢に出てきて、8分にはカナダ戦で貴重な同点弾を決めたキルステン・ファン・デン・フェンがピッチに送り込まれました。

その後は一進一退の攻防が続き、決定機も少なく、スコアは動きませんでしたが、31分にこの試合最大のピンチがなでしこに訪れました。CKのボールが阪口の頭に当たって流れたところ、ボールが鮫島のすねに当たり、あわやオウンゴールという場面。ここは海堀あゆみが右手一本で防ぎます。しかしこのこぼれ球にフリーのファン・デン・フェンが反応してシュートを放ちます。強烈なボールでしたが、阪口がゴールエリアでブロックしました。

ピンチのあとにはチャンスが巡ってきました。33分、阪口が高い位置でボールを奪い、川澄が途中出場の岩渕真奈に繋ぎます。岩渕から大儀見へのパスは少し流れてしまいますが、ボックス内に走り込んだ宮間にヒールパスを送ります。宮間は冷静にマイナスのボールを出すと、岩渕がスルーして、最後はペナルティアークの中で阪口がコースを狙い、追加点を奪いました。残り時間を考えると、少し安堵できるようないい時間帯での得点でした。

2分後、佐々木則夫監督は、川澄に代えて澤穂希を入れ、宇津木をアンカーに置く4-3-3にシステム変更して中盤を厚くしました。

一方、オランダはさかんにシュートを打ち、さらに41分にMF登録のテセル・ミダフを送り込み、最終ラインを1枚削って3バックに変えてきました。

すると47分、有吉との空中戦を制したファン・デン・フェンのヘッドを海堀がまさかのキャッチミス。ボールはゴールネットに到達して1点差に詰め寄られます。オランダは息を吹き返し、ゴール前にすばやくボールを送ります。幸い48分の混戦は、海堀が倒れ込みながらボールを押さえ、難を逃れました。

その後も粘り強く守った結果、辛くも逃げ切ることができました。とりあえず準々決勝まで駒を進められて一安心といったところです。次はブラジルを破ったオーストラリアです。この大舞台でアジアのライバルには負けるわけにはいきません。きっちり買って、7試合戦えるようになるようにと願います。

ギャラリー
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