22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2015年05月

最近出たばかりのマルティ・パラルナウ著、羽中田昌+羽中田まゆみ訳の本です。位置づけとしては、ペップ・グアルディオラがバイエルン・ミュンヘンとの監督契約を結ぶまでの半生を記した『知られざるペップ・グアルディオラ サッカーを進化させた若き名将の肖像』(グイレム・バラゲ著、田邊雅之監訳、フロムワン、2014)の続きのようなものとなります。

ただし両者には決定的な違いがあります。それは『シーズン中は、チーム内で見たことは一切口外しないこと』を条件に「自由にチームに出入りできる」ことでした。すなわち、2013―2014シーズンにバイエルンの完全密着取材を許されたのちに書かれた一冊なのです。そして時には前職のバルセロナ時代のエピソードを絡めつつ進行していきます。

詳細について触れるのは極力控えますが、戦うためにサッカーにひたすら没頭するグアルディオラ監督が何を考え、何を意図しているのかを見聞きしつつ、さらにバイエルンの選手・関係者への取材を踏まえ、ドイツ王者がトレーニングや試合を通じてどのような手ごたえを得て、進化を遂げているのかを知ることができるのです。

またおそらく密着できたことによって、一般的に言われるペップの志向するサッカーについての誤解や間違いに気づかされることもありました。これは大変意義のある話です。

そして、特に興味深かったのは、大敗したチャンピオンズリーグ(CL)準決勝のレアル・マドリー戦のくだりでしょうか。この時チームで起こっていたできごとを知るに、敗因を納得することができました。

こうした事実を知るにつれ、今シーズンのペップとバイエルンについても同じような作品を読んでみたくなります。とりわけ逆境に立たされたCL準々決勝のポルト戦、そして先日行われたばかりの同準決勝バルセロナ戦についてだけでも知りたくなって仕方ありません。
さらに欲を言えば、ペップの目指す究極のサッカーとはどんなものなのかというのも聞いてみたいものです。

429ページとなかなかに分厚い本ですが、一気に読み進められる一冊です。

公式記録では枠内シュート0に終わったバイエルン・ミュンヘンが、バルセロナに3失点を喫し、非常に厳しい状況でホームに戻ることになりました。

最初の決定機は前半12分。マルク・アンドレ・テア・シュテーゲンのロングキックをリオネル・メッシがヘッドで落とし、そのボールをフリーで受けたルイス・スアレスがドリブルで持ち込んでシュートを打ちました。ここはマヌエル・ノイアーが右足で防ぎます。

3分後の15分、カメラが指を4本立てたジョゼップ・グアルディオラ監督をとらえました。中盤の枚数を多くして攻撃性を前面に出した3-4-1-2でスタートしたシステムを、4-3-1-2に変更する合図でした。ディフェンスのことを考えると最終ライン3枚では、バルサの強力3トップを抑えきれないという判断だったのでしょう。

それでもバイエルンのパスミスが目立つこともあり、バルサ優勢の構図は変わりません。39分には再びノイアーの右足に救われました。メッシが下げたボールを受けたアンドレス・イニエスタが相手最終ラインの裏にパス。反応したダニエウ・アウベスにシュートを打たれたのです。

後半16分もノイアーでした。メッシがバイエルンの位置取りの高いDFの裏を突くパスを供給し、ネイマールが走り込んでいきましたが、ペナルティエリアを飛び出したノイアーがクリアして難を逃れました。

耐えられたのはここまででした。32分に均衡が破られたのです。始まりはネイマールのダイブと思しきプレーからでした。両チームの選手が主審に詰め寄る中、ノイアーがすばやくリスタート。これが裏目に出ました。フアン・ベルナトのドリブルが大きくなったところをダニエウ・アウベスに奪われ、バイタルエリアでフリーのメッシにボールが渡ると、メッシがすばやくシュートを放ち、ニアサイドをぶち抜かれました。

グアルディオラ監督はたまらずマリオ・ゲッツェを投入しますが、次にネットを揺らしたのもメッシでした。35分、イバン・ラキティッチのスルーパスにメッシが反応。対応したジェローム・ボアテングがバランスを崩して倒れた時点で勝負ありでした。メッシはノイアーをあざ笑うかのようなループで追加点を奪います。

とどめは49分。スアレスが倒れながらメッシにボールを託すと、メッシはすぐさまネイマールへ。ノイアーと1対1になったネイマールは落ち着いてゴールを決めました。これで3対0です。

バイエルンはフェイスガードを装着して試合に臨んだロベルト・レバンドフスキが精彩を欠き、アウェイゴールを奪うどころか、テア・シュテーゲンを脅かすことさえできませんでした。そして何より、サイドを支配できるアリエン・ロッベン、フランク・リベリーの二人を負傷により欠いたことが、世界トップレベルの戦いでは大きく響いてしまいました。

持ち駒が限られ、3点のビハインドを背負う中、ミュンヘンで奇跡の逆転劇を演じられるのか。2ndレグの興味はその一点に尽きることとなりました。

埼玉スタジアムで行われた首位攻防戦は、最後まで気持ちを切らさず走り抜いた浦和の勝利に終わりました。

前半は浦和のセットプレーを除くと両チームともほとんどがミドルシュートで、かつ枠内シュートは1本もない45分でしたが、互いに集中していて、最後の最後をやらせない体を張った守備が際立つすばらしい内容でした。

唯一、決定機に近かったのが44分。ピッチ中央付近にいた森脇良太が最終ラインの裏を狙ったパスにズラタン・リュビヤンキッチが反応。絶妙なトラップを決めましたが、左足は空を切りました。

後半に入り、浦和が運動量でガンバを圧倒するようになり、トップのズラタンの存在が目立ち始めます。逆にガンバの最前線のパトリック、宇佐美貴史へはボールがなかなか供給されずに孤立します。

ようやくめぐってきた20分の相手CKからのカウンターのチャンスは、パトリックのパスを全速力で走ってきた宇佐美がコントロールしきれなかったため、不発に終わりました。

逆に23分、柏木陽介からボールを受けた関根貴大のクロスを梅崎司がスルーし、ズラタンが倒れながら合わせましたが、東口順昭の正面でした。

こうしたつなぎの形ができてきた浦和に待望の瞬間が訪れます。39分、藤春廣輝のパスをカットした途中出場の李忠成がドリブルで持ち込むと、武藤雄樹、宇賀神友弥と渡り、ラストパス。ニアサイドに飛び込んだ阿部勇樹はとどかなかったものの、フリーのズラタンが難なく合わせて先制しました。ズラタンには金正也がついていましたが、判断を誤って別の場所に移動してしまっていました。

ガンバは疲れから押し込めない時間が続きましたが、最後の力を振り絞って攻めます。それを浦和がクリアするなどして踏ん張って凌ぎ、逃げ切りました。

浦和のピンチは終盤に2回ありましたが、いずれも西川周作が防ぎます。先制する前、31分には遠藤保仁のFKを左手でかろうじて触り、バーに当たって逃れ、47分には今野泰幸のパスカットを拾ったリンスからパスを受けた宇佐美の鋭い反転シュートをセーブしました。

日程の厳しい中で労を惜しまずプレーし続けたことで、両チームの勝ち点差は4に広がり、浦和はがっちり首位をキープしました。

6月のカナダワールドカップメンバーを7人揃えた「ほぼなでしこジャパン」のINACが新潟に勝ち、連勝を6に伸ばして、首位をがっちりキープしました。

序盤はどちらもなかなか主導権を握れずにいましたが、徐々に新潟の密集した守備がはまり、INACを苦しめます。

前半16分、鮫島彩から田中明日菜へのパスミスをかっさらった上尾野辺めぐみが左足を振り抜き、豪快かつ美しいゴールを決めて均衡を破ります。海堀あゆみも反応しましたが、届きませんでした。

INACは25分に伊藤香菜子からボールを受けた増矢理花がドリブルからシュート、36分には川澄奈穂美が右サイドからペナルティエリアに侵入しシュートを放つなどしましたが、いずれも一谷朋子の正面でした。

こうしてシュート数こそ新潟を上回るも、気温が高いせいか全体的に動きが重い前半でした。

それでも立て直せるのがINACの強さで、後半15分には大野忍のパスを受けた京川舞が、新潟DFを切り裂くダイアゴナルのパスを送ると、フリーで抜け出した近賀ゆかりが強烈なシュートを決めます。思わずガッツポーズの出た同点弾は、自らの誕生日を祝うような一発でした。

直後に上尾野辺のFKを北原佳奈がニアサイドで合わせ、海堀がかろうじてセーブし、ボールがポストに当たるというヒヤリとする場面がありましたが、これを凌ぐとINACはすばやい守備で新潟を封じるようになります。

攻撃はカウンターが効くようになり、22分にはシュートブロックでこぼれたボールを伊藤香菜子が拾い、自陣深い位置からドリブルをスタート。川澄が伊藤からボールを受け、ドリブルで運んだ後、スルーパスを通します。それを受けた増矢が冷静に流し込みました。増矢はオフサイドポジションにいたようにも見えましたが、アシスタントレフェリーのフラッグは上がりませんでした。

その後も手を緩めないINACは、25分に近賀とのワンツーから北原を抜いての川澄のシュート、31分の澤穂希のミドルシュートなどで新潟を圧倒します。

結局、スコアは動かず、2対1でINACが勝利を収めました。

先制されても動じない強さ、落ち着き、プレーの安定感は見ていて安心できる反面、年齢を重ねたINACのなでしこメンバーにはスピーディーさがやや欠けている印象を受けます。後半43分までピッチを縦横無尽に走り抜いた増矢のようなフレッシュでアクセントをつけられる若いアタッカーが、なでしこには不足しているように思えてなりません。

42,604人を集めた多摩川クラシコは、FC東京の逆転勝ちで幕を閉じました。

変則的なシステムからオーソドックスな4-4-2に戻した川崎は序盤、パスの出しどころが見つからずに迷ったりためらったりする光景が目立っていました。

それでも前半21分、中村憲剛のFKをファーサイドにいた大久保嘉人が頭で合わせてゴールを決めました。同じようにFKをファーサイドに蹴って合わせるパターンをその後二度繰り返していたので、この先制点の形は狙い通りだったと思われます。

J1通算得点で三浦知良を超えた大久保は、チームメイトと喜びのカズダンスを披露。近くに陣取っていた大勢の東京サポーターから強烈なブーイングを浴びながらのパフォーマンスでした。

これで勢いづいた川崎はボール回しに躊躇がなくなり、持ち味を出し始めていきます。前半終了時には東京の選手の足が止まり、川崎がペースを握ったまま前半を終えました。

当然、このまま終わるはずはなく、発破をかけられたと思しき東京は後半、前線から激しいプレッシャーをかけていきます。また、マッシモ・フィッカデンティ監督は、後半頭から東慶悟を同5分には前田遼一を投入し、攻撃の姿勢を強くします。

そんな中での19分、車屋紳太郎が武藤嘉紀の突破をファウルで止めてしまい、2枚目のイエローをもらって退場になってしまいました。風間八宏監督は応急処置として、トップの船山貴之を下げて角田誠を入れざるを得なくなりました。

さらに26分、西部洋平がほとんど動けないほどのFKが、太田宏介の左足から放たれて同点に追い付かれます。数的不利の川崎にとっては重い1点でした。

スタジアムのボルテージが上がり、東京のイケイケムードは一層高まります。守り固めに慣れていない川崎は、それを抑えきることができず、主導権を握り返せません。徐々に足取りも重くなっていきました。

そして42分、太田のFKをフリーの武藤がヘッドで押し込み、東京が勝ち越しを決めました。たまらずエウシーニョを下げ、最前線に杉本健勇を入れて4分のアディショナルタイムで同点に追い付こうとしましたが、特にパワープレーをするわけでもなく、数的不利と4-3-2というアンバランスな選手配置のせいからか、ボールの回りもよくなかったため奏功しません。

結果、川崎は前節の柏戦に続いて、2試合連続逆転負けという屈辱を味わうことになりました。GWをはさんだ連戦の中で、非常に痛い敗戦です。

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