22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2015年05月

なでしこジャパンのワールドカップ壮行試合的な意味合いのイタリア戦は、1対0の勝利に終わりました。

ただ、勝つには勝ったものの、ゴール前を固めるイタリアに対し、ペナルティエリアまでボールを運びながらそこでフィニッシュに行けず、混戦を嫌ってうしろにボールを下げてしまう場面が多く見られました。

たとえば前半5分。高い位置でリンダ・トゥッチェリ・チミニからボールを奪った川澄奈穂美が、すぐさま斜め前にいる大儀見優季にラストパスを送るも、サラ・ガマを前にシュートを打ちきれず、大野忍に預ける場面がありました。ここは大野が後方から走ってきた宮間あやに落として、宮間がエリアの外からシュートを打ちましたが、枠を外れました。

もう一つは、28分。ラウラ・ジュリアニのゴールキックを澤穂希が弾き返し、大儀見、宮間、大野とつないで、再び大儀見に渡ったところです。ここはシュートを打つまでに時間がかかってしまい、どうにかシュートを打ったもののエリザ・バルトリの体を張ったディフェンスにブロックされてしまいました。

最初の45分で相手ゴールを脅かした決定機と呼べるものは、18分、大儀見が相手のトラップミスを拾って、大野に渡し、大野がシュートを打ったシーンくらいでした。このシュートは右ゴールポストを直撃したため惜しくも先制はなりませんでした。

前半の終盤になってくると、イタリアの守備位置がやや低くなり、後方ながら日本がボールを支配できる時間が増えてきました。ニュージーランド同様に高い位置を保たれたため、小さなズレからパスミスが目立った序盤にくらべると、優位にゲーム運びができるようになりつつありました。

最前線に菅澤優衣香を投入した後半に入ると、前半よりも積極性が見られるようになり、7分には先制点が生まれます。宇津木瑠美のクロスは一旦、チミニに跳ね返されたものの、澤がボールを拾って再び宇津木へ。宇津木が鋭く低いクロスをゴール前に送ると、エレナ・リナリの前に体を入れた大儀見が右足を伸ばして合わせ、ゴール隅のネットを揺らしました。

ここからさらに相手を押し込むような攻めを披露したいところでしたが、あと一歩というところでチャンスを逃してしまいます。

直前にイタリアが3人を同時に投入した23分、宮間のCKに阪口夢穂が叩きつけるヘディングをするも、叩きつけすぎてバーの上を越してしまい、45分には大野の最終ラインの背後を狙ったボールを、菅澤が冷静なトラップをして抜け出し、一時はGKと1対1になりながらシュートには至らず、近くにいた鮫島に任せるも、右足のシュートはバーを越えていってしまいました。

逆に48分、イタリアが自陣の深い位置からカウンターを仕掛け、右サイドからメラニア・ガッビアディニにクロスを上げられてしまい、思い切りよく飛び込んだバルバラ・ボナンセアに当たれば1点というピンチが起こってしまいました。本大会では絶対に相手につくらせたくない形です。

ここを凌いで勝つには勝ったものの、連覇という高い目標を掲げるなでしこにとっては、やや消化不良な90分となってしまいました。試合後に大野と阪口が頭を抱えていたのが象徴的でした。

もっともこれはフレンドリーマッチにすぎないので、ワールドカップを戦いながら調子を上げていけば問題はないでしょう。参加24チームのうち、16チームがノックアウトラウンドに進めるレギュレーションですから、ゴールまであと一歩の形をそのままで終わらせず、もう一歩勇気をもって脅威を与えられるようにしたいところです。

序盤から優勢に試合を進めた東京でしたが、オウンゴールに泣く結果となりました。

前半は太田宏介のクロスに米本拓司や武藤嘉紀が飛び込むもゴールには至りません。22分の太田のFKも森重真人がフリーで折り返しますが、楢崎正剛に難なくキャッチされました。

対する名古屋は全体の重心が低く、ボール回しをすれども東京の守備陣がヒヤリとするような危険なパスを出せなかったため、相手を脅かすことができません。

印象としては前半は見せ場の少ない45分でした。

ハーフタイムが明け、後半の立ち上がりは東京がさらに名古屋ゴールに襲い掛かります。しかし、3分の武藤のミドルシュートは楢崎にセーブされ、4分には米本のクロスに河野広貴が頭を合わせるもミートしきれず、5分の太田のクロスに合わせに行った前田遼一のプレーは、田中マルクス闘莉王へのファウルをとられてしまいました。

とはいえ、少しずつホームチームがゴールに近づいているかに見えた試合でしたが、均衡を破ったのは名古屋でした。

28分、自陣深い位置からドリブルをスタートした矢田旭が、小屋松知哉に絶妙なスルーパスを通して預けると、小屋松がダイレクトで低いクロスを上げます。最終ラインとGKの間に走り込んでいた川又堅碁に合わせたようなボールでしたが、その前でスライディングした森重の左足に当たり、そのままゴールを割ってしまいました。なんとも痛い失点です。

直後に三田啓貴、さらには運動量の落ちた河野に代えて林容平、そして新加入のラサッド・ハッセン・ヌイウィと前線の選手をマッシモ・フィッカデンティ監督は送り込みますが、際どいフィニッシュには至りません。41分の太田の浮き球のパスを受けた三田のクロスも、体を投げ出した林には届きませんでした。

結果、ダニルソン・コルドバが負傷離脱し、交代で入った磯村亮太はイエローカード2枚で退場するという災難続きの名古屋が逃げ切りに成功。逆に東京はリーグ戦3連敗を喫することとなりました。

ワールドカップ出場国同士の対戦は、なでしこジャパンが勝負強さを発揮して1対0で勝利を収めました。

とはいえ、日本はエンジンがかかるまでに時間がかかってしまいました。11分にアナリー・ロンゴが右サイドから走ってサラ・グレゴリアスとのワンツーを決め、そのシュートを山根恵里奈がキャッチして、ようやく目が覚めたのか、攻めのスイッチが入りました。

以降は日本のFKやCKが続き、前半23分に均衡を破ります。宮間あやのCKに澤穂希が中央で右足を合わせてゴールを奪ったのです。マークについていたケイティー・ダンカンを振り切っての一撃で、本大会までとっておきたいような鮮やかさでした。

先制した後は、鮫島彩、宮間のいる左サイドを中心に攻め込みます。そして29分、44分には大儀見優希がミドルシュートを放ち、ゴールを狙いました。

ところが後半になると、いきなりピンチが訪れます。3分、最終ラインの背後をつかれたボールに対し、熊谷紗希の反応が遅れてしまい、ハナ・ウィルキンソンをペナルティエリア内で倒したとしてPKの判定が下ったのです。

幸いウィルキンソンのPKはクロスバーを越えたため、難を逃れましたが、まだまだゴール前に迫られるピンチが続きます。

13分、遠い位置からのFKへの対応で山根も飛び出してゴール前が混戦になり、競り勝ったアビー・アーセグのヘッドの落下地点にいたアンバー・ハーンが頭を振って押し込みます。ここは岩清水梓の懸命のカバーによって救われました。

ピンチの後にはチャンスが訪れると言いますが、この試合ではなでしこに再び風が吹くことなく、絶好機をつくれないままタイムアップを迎えてしまいました。決して引かないニュージーランドが高い位置からボールを奪いに来ていたため、しばしばミスを犯すほど後方でのビルドアップに苦労し、持ち前のパスサッカーを展開できずにいました。

ただ、ワールドカップを想定した試合という意味では、緊張感が高く、ニュージーランドは申し分ない対戦相手でした。そして、順調な仕上がりとは断言できないものの、このギリギリの状況できっちり勝ち切る強さは、さすがディフェンディングチャンピオンと言わざるを得ません。

前節、沖縄でのホームゲームを1対0の辛勝で終えたINACが、神戸に戻った今節は逆転勝ちを収めました。

序盤は完全にジェフペース。豊富な運動量でINACの選手を囲い込み、攻守において圧倒します。そして前半3分、34分と筏井りさにゴールを奪われます。いずれも1トップの菅澤優衣香に神戸DFが引き付けられたところを狙われ、ほぼフリーにさせてしまいました。また後者は山根恵里奈のロングキックから生まれました。

2点目を失った直後の36分、すかさず松田岳夫監督が動きます。南山千明に代えて増矢理花をピッチに送り出したのです。この投入を合図に、INACは重い腰を上げるかのように前に出ていきます。

すると44分、増矢も絡んで得たCKから、甲斐潤子が追撃弾を決めました。先週のベガルタ仙台レディース戦では、CKからのシュートが二度ポストに阻まれましたが、この日はゴールが必要な場面でネットを揺らしました。

後半に入ってもINACの、とりわけ増矢の勢いは衰えません。8分に鮫島彩がスルーした京川舞のクロスを受けて際どいシュートを放つと、14分には大野忍が展開したボールを川澄奈穂美がダイレクトで相手DFとGKの間にクロスを入れ、それを増矢が飛び込んで合わせました。

3分後には川澄のクロスが一度は弾かれたものの、近賀ゆかりがやや斜め前にいた増矢に預けると、増矢は一瞬で千野晶子を振り切り冷静にフィニッシュ。ついに試合をひっくり返しました。

ジェフは中盤でつぶしに行けなくなり、22分に追加点を献上します。澤穂希が中盤でボールを奪うと、こぼれ球を伊藤香菜子が収めてドリブルし、外側を回って走った増矢にボールを預けます。ペナルティエリア付近まで来た増矢がグラウンダーのクロスを入れると、山根より速くボールに追い付いた京川が決めたのです。INACはわずか8分間で3得点を奪ってしまいました。

32分には千野のクロスを受けた菅澤が落ち着いてシュートを決めましたが、千葉の反撃もここまで。終盤、CKから波状攻撃を仕掛けるも、INACが耐え抜き、実りませんでした。

結果、ビハインドの状況下で早々に増矢を入れたINACが試合を制し、首位をキープしたままワールドカップの中断期間に突入することとなりました。

スコアだけ見れば、バイエルンが意地の逆転勝利となりましたが、1stレグでついた3点の差は大きく、終盤になるにつれ凡戦と化していきました。

先制はバイエルンでした。前半7分、シャビ・アロンソのCKをフリーのメディ・ベナティアが合わせて、ゴール左隅に押し込んでバルサとの得点差を2に縮めます。

8分後、悪夢が現実に起きます。相手のロングボールをジョルディ・アルバが拾うと、そのままアンドレス・イニエスタに渡します。イニエスタは浮き球でネイマールにパスを送ると、ブラジルの至宝がドリブルを開始。バイエルンDFを十分に引き付けてリオネル・メッシにボールを預け、自身は最終ラインを気にしつつ前線に移動します。

ゆっくりボールを受けたメッシは、猛然と走るルイス・スアレスに絶妙のタイミングでスルーパス。スアレスはベナティアとマヌエル・ノイアーの興味を自分に向けさせてネイマールへ。ネイマールはただ足を合わせるだけでネットを揺らしました。1週間前にバイエルンが取れなかった貴重な貴重なアウェイゴールを奪ったのです。

さらに29分、痛恨の一撃が加わります。今度はハビエル・マスチェラーノのロングフィードをメッシが頭で落とすと、その先にはスアレスがいました。またもバイエルンDFを連れて走ると、ネイマールに託します。ネイマールはトラップから鮮やかにゴールを陥れました。

それでもあきらめないのがドイツ王者です。40分にはチアゴ・アルカンタラのシュートがイニエスタに当たってこぼれたボールに対し、ロベルト・レバンドフスキが右足を振り抜きました。ここはマルク・アンドレ・テア・シュテーゲンが長い腕で一度はセーブしながらゴールラインに転がったボールをかきだします。

前半を1対2で終えると、バルサのルイス・エンリケ監督は堅実な采配をしていきます。好調だったルイス・スアレスを下げて、後半開始からペドロ・ロドリゲスを投入。メッシを右サイドから中央に移動させて、守備のバランスを整えます。

26分にはジェレミー・マチューを送り出し、マスチェラーノを中盤に上げてディフェンスを強化します。最後は29分にイニエスタに代えてシャビを投入。試合を締めにかかりました。

こうした采配が繰り広げられる間にバイエルンは、ミドルシュートを浴びせながら、レバンドフスキとミュラーがゴールを決めて、2ndレグのみのスコアはひっくり返したのですが、依然トータルスコアは3対5。焼け石に水といった空気はどうにも解消できません。

最後まで攻撃の姿勢は貫きましたが、バルサに逃げ切りを許し、バイエルンは準決勝で姿を消すこととなりました。ただ、ワールドカップ直後のシーズンで負傷者も多い中、強烈なインパクトを残しつつ、ここまで戦ってきたことは強く印象に残りました。

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