22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2015年03月

本田圭佑が原案協力し、なおかつ本編のメインキャストとして活躍するという、連載ものとしては難しいチャレンジをしているマンガです。

それでもきちんと成立しているのは、現実世界の本田のキャラが立っているからでしょう。日本代表の中でも本田でなければ、本田だからこそ、虚構の世界でも輝いていられるのだと思います。事実、草場道輝先生は1巻の『おまけまんが』で、「本田選手のキャラが濃すぎて主人公が食われそう!!」という困難に直面していたと書いています。

それにしても、この作品ではサッカー界には本田のみならず、個性の強い、濃いキャラクターが多いものだとあらためて実感させてくれます。クローノス・ロナウドのモデルになったクリスティアーノ・ロナウドしかり、マリオ・パンテッラのモデルであるマリオ・バロテッリしかりです。いずれもマンガの中で躍動できるだけの強烈な個性を持っています。

もちろんそういったモデルたちを、マンガの中でうまくデフォルメさせて描いている草場先生の手腕があってこそなのですが。

一方、肝心のストーリーも、現実世界とかなりリンクしながら進んでいます。最初は日本代表が南アフリカワールドカップで決勝トーナメントに進み、ラウンド16でパラグアイにPK戦の末に敗れたところから始まっていますし、2011年から一気に2013年末まで話が飛んだため、詳細は描かれませんでしたが、アジアカップを制した後、コンフェデレーションズカップでブラジルに0対3で敗れたり、以降の親善試合で敗れていたりと、ザックジャパンが歩んでいった現実を相当に踏まえた展開になっています。

ただし、今の代表が苦戦している理由は、R・マドリッドに所属する主人公の坂本轍平と本田のタイプが異なり、共存がうまくいっていないからということで、読み手を納得させてくれます。ブラジルワールドカップ編に突入した時点でも、この問題を残した状態になっています。

そこで新キャラの弱気な若き天才、大久保塁が「通訳」として機能し、轍平たちが描くゴールに向かって星がつながる絵(イメージ)を本田と共有する役割を果たしてきつつあります。大久保は轍平の姉、琴音の指導を受け、U-18の選手だけで構成された新生日本代表の一員として登場し、台頭してきた選手です。

この新生日本代表と轍平たち旧代表との非公開試合は、同じ『週刊少年サンデー』で連載されていた『俺たちのフィールド』でのリザーブ・ドッグズ対旧・日本代表や、『キャプテン翼<ワールドユース編>』のR・J・7と全日本ユースの対決を彷彿とさせました。

現実世界のブラジルワールドカップでは惨敗してグループステージ敗退に終わった日本代表が、『ファンタジスタ ステラ』ではどこまで辿り着くことができるのか否か――。リアルな世界とどう折り合いをつけて、震えるような感動をもたらしてくれるのか。今後の展開が楽しみです。

マカオ戦から中1日でのベトナム戦は、前線に久保裕也、南野拓実といった海外組を配し、さらに中島翔哉、矢島慎也らテクニックを持った選手を並べ、グループ首位通過をより確実にしようとする意図が感じられました。

前半はロングボール一辺倒のベトナム相手になかなかチャンスがつくれず、特に左サイドから山中亮輔がさかんにクロスを上げるものの、ボールが流れてしまうことが多くシュートには至りません。

最初の決定機は23分。大島僚太の縦パスを南野がスルー。パスを受けた中島が縦に仕掛けて左足でシュートを放ちました。ここはGKフィー・ミン・ロンにセーブされます。

このあたりから中盤でボールを奪えるようになり、31分には南野が高い位置でボールを奪ってシュートを打ちました。その後もさらにシュートチャンスをつくりだしますが、ゴールには至りません。

待望の先制点の瞬間は43分に訪れます。マイボールにしてから久保が南野に落とし、南野が右足アウトサイドで中島へパス。中島はペナルティエリアを右から左に横断し、南野が一瞬触ったボールを最後は自らフワリとしたシュートでゴールに決めました。いい時間帯での得点に手倉森誠監督も安堵の表情を浮かべていました。

そのままハーフタイムを迎えるかに思われた45分、ベトナムがFKのチャンスを得ると、ヴー・ヴァン・タインの正確なキックにフィン・タン・タイが合わせます。ここは櫛引政敏がセーブして難を逃れました。

後半になるとしばらくの間、日本はサイドからのクロスを封印します。それでもなかなかチャンスをつくれないまま、やや荒れた展開で時間が進んでいきました。

終盤はベトナムが攻勢に出て、日本が懸命のクリアで凌ぐ場面も目立ちました。それだけでなく、ぬかるんだピッチと暑さも影響してか、運動量もガクンと落ちてきます。

そこで最悪でも1対0で逃げ切りを図ろうと、40分あたりからは最終ラインでキープしたり、櫛引がFKをなかなか蹴らなかったりして時計の針を進めようとしました。

しかしタイムアップ直前の後半48分、植田直通のロングボールを途中投入の浅野拓磨が絶妙なトラップでキープすると、フリーでエリア内に入ってきた中島へパスを送ります。中島は体勢を整えて、ボールを受けた位置からそのままやわらかいシュートを決めました。

結果、苦しみながらも前半と後半、それぞれの終わり間際に中島が得点を挙げ、2対0で勝ち点3を上積みしました。三浦俊也監督率いるベトナムに、アジアで戦う難しさを痛感させられたような90分でした。

ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が就任して初めての試合です。スタメンには永井謙佑、山口蛍、権田修一らロンドン五輪ベスト4メンバーが6人名を連ね、海外組を揃えたフルサイドで臨みながら、世代交代を感じさせるフレッシュな陣容でチュニジアを迎え撃ちました。

前半は目の前の選手を確実につぶしに行こうとする守備の意識の高さが見られ、その当たりの強さにチュニジアが手こずっているようでした。

絶好機は21分、清武弘嗣のCKを川又堅碁が相手DFに囲まれながらヘディングしたシーンでした。ボールは惜しくもバーを叩き、先制点とはなりません。

その後も25分、28分に藤春廣輝が、32分には長谷部誠のクロスから清武がシュートを放つなど、チュニジアゴールを襲う場面はありましたが、ふかしたり、ミートしなかったりでチャンスを生かせませんでした。

試合が動いたのは、後半15分に香川真司と本田圭佑、27分に宇佐美貴史、岡崎慎司が入ってからでした。特に、しばしば試合の流れに関係なくアップで映された香川と本田のコンビネーションが光っていました。33分の先制点は長谷部の縦パスを受けた香川がドリブルで持ち込み、左サイドを走る本田に預け、本田が体勢を崩しながらクロスを上げると、最後は岡崎が頭で叩き込みました。

さらに38分、追加点が本田によってもたらされます。中盤でボールを奪うと吉田麻也が縦に入れ、本田、宇佐美、岡崎と繋ぎ、左サイドに流れてきた香川へボールが渡り、香川が入れたクロスはモエズ・ベン・シェリフィアに触られますが、こぼれ球に反応した本田がゴールを決めました。

39分になると、今野泰幸、内田篤人が投入され、気づけばスタメンの半分以上が見慣れた顔ぶれになっていました。ただ、誰もが先発安泰ではないという環境をハリルホジッチ監督がつくりだしていたのは、チームにとってプラスに働きそうです。

そんな中で44分、代表デビュー戦の宇佐美に絶好のチャンスが訪れます。今野が中盤で競り勝ったボールを岡崎が受け、すぐさま香川に預けます。香川は一旦ためて、前方にスルーパスを供給。反応した宇佐美が右足でGKの取れないコースを狙ったのです。しかし残念ながらボールはポストを直撃。こぼれ球はベン・シェリフィアが押さえました。

試合はこのまま終わり、2対0の完封勝利を収めました。相手がどうであれピンチになるような危ない場面はほとんどなく、アジアカップで心が折れた日本にとっては幸先いいスタートとなりました。

前半4点、後半3点とバランスよくゴールを重ね、若き日本代表がリオ五輪への一歩を踏み出しました。

序盤から攻勢に出る日本は、5分に野津田岳人のFKに遠藤航がヘッド、8分に松原健のクロスに鈴木武蔵のヘッド、10分には浅野拓磨の右足アウトと次々にシュートを浴びせます。ただ、枠をとらえることができず、決定機にはなりきれません。

またピッチコンディションが日本のようにきれいではないせいか、うまくボールが転がらないため組み立てがうまくいっていない印象を受けました。

先制点は前半22分にようやく生まれました。豊川雄太のCKをファーでフリーになって飛び込んだ遠藤が頭で合わせてネットを揺らします。

4分後の26分には、7本のパスを繋いだ後、山中亮輔がGKとDFの間にクロスを入れ、豊川が豪快にヘッドで決めると、31分、松原のロングパスを鈴木が絶妙なトラップで収め、落としたボールを野津田が左足で決めました。続く33分には松原が早目に入れたクロスをマカオの鄧浩輝がオウンゴール。11分間で一気に4点を奪い、相手の戦意を喪失させます。

後半は15分に矢島慎也、18分に南野拓実が送り込まれ、手倉森誠監督は前線の活性化を試みます。

すると21分、矢島のピッチ中央を切り裂くスルーパスに鈴木が反応、落ち着いてゴールに流し込みました。

これで再びえげつないほど容赦ないゴールラッシュが期待されましたが、たびたび給水の必要なマレーシアでは追加点が生まれません。解説の清水秀彦による手厳しいネガティブ節が止まらなくなります。

逆に30分、奈良竜樹と山中に競り勝った何嘉誠のスルーパスが林嘉誠に通りそうになり、櫛引政敏がスライディングでクリアする場面がありました。DFの対応の甘さが出たシーンでした。

日本は相手ゴール前でボールが収まらなくなり、先日のミャンマー戦と同様に後半失速する傾向が続くかに思われましたが、アディショナルタイムに加点します。46分に岩波拓也の鋭い縦パスを起点に野津田、矢島、南野と繋いで野津田が、48分には原川、浅野から南野に渡り、南野が冷静にニアサイドにゴールを決めました。

最後に帳尻を合わせた格好になり、7対0の完勝スタートとなりました。確かに全体としてはもっとゴールが奪えたような、物足りないように感じられた90分でしたが、暑さと中1日で立て続けに3試合を戦わなければならない日程を考慮すれば、決して悪くない結果でしょう。

前半はインテルがやや攻めあぐね、カウンター狙いで動きを止めずにハードワークをし続けるサンプドリアといった構図でした。そんな中でも互いにシュートを打ち合う、試合終盤のようなオープンな展開になっていきます。ただし、ほとんどが枠外シュートで見せ場は少なく、唯一枠をとらえたのは19分のエデルのシュートでした。ここはサミル・ハンダノビッチがセーブします。

後半に入ると、インテルが意欲的に攻勢に出ます。1分にはCKのセカンドボールをフレディ・グアリンが拾って左サイドにいたマウロ・イカルディに預けると、イカルディがシュートを放ちます。そのシュートは惜しくもクロスバーに阻まれましたが、こぼれ球をジェルダン・シャキリが収めてゴールを狙いました。これはエミリアーノ・ビビアーノがキャッチします。

インテルは攻守の切り替え速く、果敢にシュートを打っていきます。4分にグアリンのミドル、10分にシャキリの右足、12分にはグアリンのクロスにイカルディがヘッドとサンプドリアゴールを脅かし続けました。

しかし19分、カウンターを仕掛けたロベルト・ソリアーノがダニーロ・ダンブロージオに倒され、サンプドリアがFKのチャンスを得ます。このFKでサミュエル・エトーがボールを転がし、アンジェロ・パロンボが止めたボールをエデルが豪快に蹴りました。ボールは鋭くゴール右のポスト内側を叩き、逆サイドネットに吸い込まれました。

先制したサンプドリアは強固なブロックを形成。インテルにつけ入るスキを与えません。特に中央が固く、インテルはパスの出しどころが見つからず、サイドからのクロスに活路を見出そうとします。それが逆に単調な攻撃になってしまい、クロスの精度も低く、なかなかチャンスが生まれません。48分にグアリンのクロスが流れて、惜しい場面があったくらいです。

結果、サンプドリアが逃げ切って、1対0で勝利します。マッシモ・フェレーロ会長もご機嫌な夜になりました。

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