首位攻防戦の序盤、ベレーザの攻守におけるハイペースでスピーディーなサッカーにINACは圧倒されました。一時はハーフコートゲームのような状態になるほど押し込まれていました。

ベレーザは中盤で細かくかつすばやくボールを繋いで、右サイドを中心に攻め込んできました。開始早々には田中美南が海堀あゆみをかわしてフリーでクロスを上げる場面もありました。

一方、澤穂希がお団子ヘアをほどいて気合いを入れ直したINACは、ベレーザの囲みをかいくぐり、空いたスペースを活用しようとしますがなかなかうまくいきません。

ようやくチャンスをつくったのが、前半33分でした。澤が右サイドでフリーの大野忍に預けると、大野はクロスを上げます。これを受けた川澄奈穂美が右足を振り抜くも、上辻佑実にブロックされます。それでもこぼれ球を川澄が拾って中盤に下げると、そこにいた伊藤美紀が迷わずミドルシュートを放ちました。 ワンバウンドしたボールを山下杏也加が弾き、高瀬愛実が詰め寄りましたが、これは山下へのファウルになりました。

逆に決定機を逃した8分後に大ピンチが訪れます。原菜摘子のDFラインの背後を狙ったパスを田中が見事なボールコントロールで収めると、海堀と1対1になったのです。失点を覚悟するような絶体絶命の場面でしたが、ギリギリまで動かなかった海堀が勝ち、田中のシュートはほぼ正面でキャッチしました。

スコアレスながら劣勢に立たされていたINACは、後半から高瀬に代えて増矢理花を投入します。増矢のスピードと突破力を生かしたいという意図でしょう。さらにシステムを4-2-3-1に修正して、ベレーザと同じ形にしました。

ただ、エンドが変わってもベレーザペースは変わりません。選手達の運動量は一向に落ちず、展開力のある阪口夢穂が何度もシュートチャンスをつくりだしていました。ここをつぶしておきたいINACでしたが、攻撃の起点になる背番号20を抑えることができません。

松田岳夫監督は、伊藤美紀に代えてチャン・スルギ、鮫島彩に代えて中島依美を送り出し、攻撃のテコ入れを図るも主導権を奪い返せず、まともなシュートすら打てない展開が続きました。

すると後半29分、ベレーザに先制を許します。籾木結花のクロスに対して後方から走り込んだ阪口が頭で合わせ、ゴールを奪ったのです。パサーとしてだけでなく、フィニッシャーとしての能力も高い阪口ならではの得点でした。直前に川澄がCKを阻止するためにスライディングでクリアしましたが、それが報われず、スローインからの流れで左サイドを崩されて失点してしまいました。

その後、反撃しなければならないINACのシュートらしいシュートは、32分の増矢によるミドルシュートくらいしかありませんでした。最後までリーグ最少失点を誇るベレーザのコンパクトで集中した守備を崩しきれず、攻撃の形としてはクロスまでは行くもののフィニッシュには至らない場面が数回あった程度です。

最終的なスコアは0対1でしたが、完敗と言っていいほど終始ベレーザペースだった90分。勝ち点差を1に縮められただけでなく、いいところのなかったINACには大きなダメージとなりました。